介護保険の住宅改修とは?手すり・段差の工事と20万円の枠
| 支給限度基準額 | 20万円 |
|---|---|
| 支給は最大 | 18万円 |
| 対象の工事 | 6種類 |
| 申請 | 工事の前 |
| 分類 | 住まい・家庭の補助金 |
| 所管 | 厚労省 |
| 最終確認日 | 2026/10/14 |
| 出典 | 12本 |
この記事の要約
要支援・要介護の人が手すりや段差解消の工事をすると、介護保険から工事費の9割(65歳以上で所得が一定以上なら8割・7割)が出ます。20万円の枠と18万円の上限、対象の6種類、事前申請とケアマネの役割、自治体の上乗せを厚労省資料で整理。
本文
親の足腰が弱ってきて「トイレと廊下に手すりを付けたい」「玄関の段差をなくしたい」と考えたとき、まず確かめたいのが介護保険の住宅改修です。要支援・要介護の認定を受けた人が自宅で手すりの取付けや段差の解消などの工事をすると、市区町村から工事費の一部が支給されます(介護保険法第45条・第57条)。よく「20万円まで出る」と言われますが、正確には20万円は工事費の枠(支給限度基準額)で、支給されるのはその9割まで、つまり最大18万円です(65歳以上で一定以上の所得がある人は16万円・14万円)。そしていちばん大事なのは、工事の前に市区町村へ申請することです。この記事では、2026年10月14日に厚生労働省の資料・告示・通知と法令で確認した内容をもとに、しくみと手順を整理します。
OVERVIEW01制度の全体像
| 根拠 | 介護保険法第45条(要介護の人:居宅介護住宅改修費)と第57条(要支援の人:介護予防住宅改修費)。補助金ではなく介護保険の給付です |
|---|---|
| 使える人 | 要支援1・2、要介護1〜5の認定を受け、自宅で暮らしている人。対象は本人が現に居住する住宅の改修に限られます(施行規則第74条・第93条) |
| 対象の工事 | 厚生労働大臣が告示で定める6種類(手すりの取付け、段差の解消など。次の章で説明) |
| 支給限度基準額 | 20万円。要支援・要介護の区分にかかわらず定額 |
| 支給される額 | 工事費の9割(65歳以上の第1号被保険者で、一定以上の所得がある人は8割または7割)。20万円の工事なら18万円(16万円・14万円)が上限 |
| 申請先 | お住まいの市区町村(介護保険の保険者)。工事の前と後の2回、書類を出します |
厚生労働省の通知(老企第42号)は、20万円の住宅改修を行った場合「通常、保険給付の額は18万円」で、所得により「16万円」「14万円」になると説明しています。8割・7割になるのは65歳以上の第1号被保険者で一定以上の所得がある人に限られ、40歳以上65歳未満の第2号被保険者は9割です(介護保険法第9条・第49条の2・第59条の2)。20万円を超えた部分は全額が自己負担です。たとえば1割負担の人が25万円の工事をすると、支給は20万円の9割の18万円で、自己負担は7万円(20万円の1割の2万円+20万円を超えた5万円)になります。
この20万円の枠は1回で使い切る必要はありません。厚生労働省の資料には「限度額の範囲内であれば、複数回の申請も可能」とあり、たとえば先にトイレの手すり、あとで浴室の段差というように分けて使えます。
WORKS02対象になる6種類の工事と、対象外になる例
対象の工事は告示(平成11年厚生省告示第95号)で6種類に決まっています。どこまでが含まれるかは、厚生労働省の通知(老企第34号)が具体的に書いています。
| 1. 手すりの取付け | 廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等に、転倒予防や移動・移乗のために付ける手すり。手すりの形状は、二段式、縦付け、横付け等の「適切なもの」とされています |
|---|---|
| 2. 段差の解消 | 敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げなど。玄関から道路までの通路の段差・傾斜も含みます |
| 3. 床・通路面の材料の変更 | 滑りの防止や移動を楽にするための変更。居室の畳敷から板製床材・ビニル系床材への変更、浴室の床を滑りにくいものへ、通路面を滑りにくい舗装材へ、など |
| 4. 引き戸等への扉の取替え | 開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテン等に替える工事のほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含みます |
| 5. 洋式便器等への便器の取替え | 和式便器から洋式便器への取替えや、便器の位置・向きの変更 |
| 6. 1〜5に付帯して必要な工事 | 手すりのための壁の下地補強、浴室のかさ上げに伴う給排水設備工事、床材変更のための下地の補修や根太の補強、扉の取替えに伴う壁や柱の改修、便器の取替えに伴う給排水設備工事や床材の変更など |
- 置くだけの手すり・スロープは住宅改修ではない:取付けに工事を伴わない手すりやスロープは、介護保険の「福祉用具」の扱いです。逆に、工事を伴う手すりやスロープは住宅改修の対象になり得ます。
- 動力で段差を解消する機器は対象外:昇降機、リフト、段差解消機など、動力で段差を解消する機器を設置する工事は除かれます。
- すでに洋式の便器に機能を足すだけは対象外:和式から暖房便座や洗浄機能付きの洋式便器への取替えは含まれますが、既に洋式便器である場合にこれらの機能を付け加えることは含まれません。和式の非水洗便器を水洗にする場合、水洗化の部分は対象外です。
- 自動ドアの動力部分は対象外:引き戸等への取替えにあわせて自動ドアにしても、動力部分の費用は給付の対象になりません。
- 新築・居室を増やす増築は対象外:ただし廊下の拡幅にあわせて手すりを付ける、便所の拡張に伴い洋式便器に替えるといった場合は、手すりや便器の部分だけが対象になり得ます。
- 対象外の工事と一緒に行う場合は、対象部分を抜き出したり按分したりして、対象となる費用を計算します。工事費内訳書でその算出方法を示します。
なお通知によると、本人や家族が自分で材料を買って工事した場合は、材料の購入費が支給の対象になります。この場合も必要な書類は変わりません。
RESET0320万円の枠が「もう一度」使える2つの場合
20万円の枠は、要介護度が変わっても原則として変わりません。要介護から要支援になった場合も同じ枠で管理され、以前に支給を受けた分を差し引いた額が残りになります。ただし、次の2つの場合は改めて20万円までの枠が設定されます(老企第42号・別紙1)。
| 3段階リセット | 初めて住宅改修に着工した日の要介護度を基準に、下の「介護の必要の程度」が3段階以上上がった状態で住宅改修をするとき、もう一度20万円まで。1人につき1回限り |
|---|---|
| 転居リセット | 転居した場合は、前の住宅での支給状況に関係なく、転居後の住宅で20万円まで。前の住宅に戻ると、前の住宅の支給状況が復活します |
| 第一段階 | 要支援1(または経過的要介護) |
|---|---|
| 第二段階 | 要支援2 または 要介護1 |
| 第三段階 | 要介護2 |
| 第四段階 | 要介護3 |
| 第五段階 | 要介護4 |
| 第六段階 | 要介護5 |
数えるのは要介護度の数字ではなく、この「段階」です。通知の例では、要支援1から要介護2になった場合、区分は3つ上がっても段階は2段階しか上がらないため、3段階リセットは使えません。要介護1で初めて住宅改修をした人が要介護4になれば3段階上がるので、残りがあってもリセットされ、改めて20万円が枠になります。段階が上がっても、その時点で住宅改修をしなければ適用されない点にも注意してください。
同じ家に要介護の人が2人いる場合、枠は1人ずつ管理されるので、それぞれ申請できます。ただし同じ工事を2人で重ねて申請することはできず、共用の部屋の床材を替えた場合はどちらか一方だけが申請します。
FLOW04申請の流れ──ケアマネに相談し、工事の前に申請
- ケアマネジャー等に相談:担当のケアマネジャーがいなければ、地域包括支援センターに相談します。
- 施工事業者を選び、見積もりを取る:通知は、ケアマネジャー等が「複数の住宅改修の事業者から見積もりを取るよう」利用者に説明することとしています。
- 市区町村へ事前申請:支給申請書、工事費見積書、住宅改修が必要な理由書、改修後の完成予定の状態が分かるもの(日付入り写真や住宅の間取り図など)を出します。本人が住宅の所有者でない場合は、所有者の承諾書も必要です。
- 市区町村が内容を確認し、結果を教えてくれる:この確認は、工事後の「支給決定」とは別のものです。
- 工事・支払い:工事が終わったら施工業者に支払います。
- 工事後の申請:領収書、工事費内訳書、完成後の状態を確認できる書類(便所・浴室・廊下など箇所ごとの改修前と改修後の写真。原則として撮影日がわかるもの)を出します。
- 支給額の決定・支給:市区町村が事前の書類と工事内容を確認し、必要と認めれば支給されます。
「住宅改修が必要な理由書」を書けるのは、厚生労働省の資料によると、介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上などの資格を持つ人です。通知は、ケアマネジャー等が理由書を作るのは居宅介護支援の一環なので利用者から別に費用を取ることはできないこと、ケアマネジャー等が工事業者から仲介料・紹介料を取ることもできないことを明記しています。
改修前の写真は、工事が始まると撮り直せません。工事後の申請では改修前と改修後の両方の写真が求められるので、着工前に撮影したかを業者と確認しておきましょう。
PAYMENT05お金の流れ──いったん全額払うか、自己負担分だけ払うか
国の資料が示す流れでは、工事が終わったら利用者が施工業者に支払い、領収書をつけて市区町村に申請し、あとで給付を受けます。いったん工事費の全額を立て替える形で、「償還払い」と呼ばれます。
これとは別に、自治体によっては受領委任払いを設けています。たとえば文京区は、利用者が区に登録された工事業者に保険給付分の受け取りを委任し、区がその業者に直接支払う「給付券方式」を案内しており、利用者の負担は「給付対象工事の利用者負担分」で済むとしています(業者は区の登録事業者名簿に載っている所に限られます)。受領委任払いがあるか、使える業者はどこかは自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村で確認してください。
LOCAL06自治体の上乗せ・独自の助成
介護保険法第45条第6項は、市町村が条例で、20万円の基準額に代えてそれを超える額をその市町村の基準額にできると定めています。また厚生労働省の通知は、市町村が介護保険の対象外の工事や、限度額を超える工事について独自に助成することは可能としています。つまり、介護保険の20万円を超える部分や浴槽の交換などを、市区町村が別の制度で支える場合があります。あるかどうか、いくらかは自治体ごとにまったく違います。
一例として、東京都大田区の「高齢者自立支援住宅改修助成事業」は、区内に住む65歳以上で要支援・要介護の認定を受け、身体状況等により住宅の改修が必要と認められる人を対象に、次の助成対象限度額を定めています(2026年10月14日に区の公式ページで確認)。
| 浴槽の取替え(付帯する給湯設備等の工事を含む) | 助成対象限度額 379,000円 |
|---|---|
| 流し・洗面台の取替え(付帯する給湯設備等の工事を含む) | 助成対象限度額 156,000円 |
| 便器の洋式化(付帯する工事を含む) | 助成対象限度額 106,000円 |
大田区の制度では、介護保険の住宅改修として限度額内で施工できる場合は介護保険を使い、1つの箇所に介護保険と区の制度の両方を使うことはできないとしています。自己負担は介護保険の負担割合に準じて1割・2割・3割です。区は、検討している人に事前に地域包括支援センターへ相談するよう案内しており、本人の状況などを確認して理学療法士等の助言を受けたうえでの申請になること、事業者による見積もりや工事計画書等の提出も必要なことを案内しています。大田区のように、介護保険の限度額内で施工できる箇所は介護保険を使い、限度額内に収まらない別の箇所や、介護保険の対象外の工事を自治体の制度で支える仕組みを設けている市区町村もあります。相談の際は両方をまとめて聞いてください。制度の探し方は補助金の探し方でも解説しています。
ECO REFORM07省エネリフォームと一緒にするときの注意
窓の断熱や給湯器の交換と同じ時期に手すりや段差の工事をするなら、国の住宅省エネ2026キャンペーンも関係します。みらいエコ住宅2026事業のリフォーム補助には「バリアフリー改修」の区分があり、手すりの設置は7,200円/戸、段差解消は8,400円/戸、廊下幅等の拡張は33,600円/戸と定められています。ただしこの事業は、外気に面した窓などがある居室1つで省エネの「要件化工事」を行うことが前提で、バリアフリー工事だけでは補助を受けられません。また、対象の住宅は原則として「平成28年以前に新築された住宅」(平成28年12月31日以前に新築されたことが登記事項証明書で確認できる住宅)で、事務局に登録した「みらいエコ住宅事業者」と工事請負契約を結んで行う工事に限られます。工事着手の期間は「遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合は当該時点まで)」です。
みらいエコ住宅2026事業の公式ページは、他の補助金との併用について「同一の補助対象となるリフォーム工事に対して、重複して国の他の補助制度から補助を受けることはできません」としています。同事業のよくある質問は、住宅(外構含む)のリフォーム工事を対象とする国の他の補助制度との併用はできないとしたうえで、「各事業で対象とするリフォーム工事の請負工事契約と、他の補助制度で対象とするリフォーム工事の請負工事契約が別である場合については、併用することができます」と説明しています。あわせて、「請負工事が別であることに加え、工期が別であることを併用可の要件とする補助制度もあります」としています。ただし、介護保険の住宅改修がこの「国の他の補助制度」に当たるかは、今回確認した公式資料には書かれていませんでした。両方を考えている場合は、契約の分け方も含めて、市区町村の介護保険担当とリフォーム事業者の双方に事前に確認してください。住宅の補助金全体の地図は住宅省エネ2026キャンペーンのまとめで整理しています。
FAQ08よくある質問
CONTACT09相談先
手続きや対象になるかは、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口か、地域包括支援センターに相談してください。担当のケアマネジャーがいれば、まずケアマネジャーへ。当サイトは申請代行を行わず、特定の工事業者をおすすめしません。
※本記事は情報提供を目的とするもので、給付を保証するものではありません。内容は2026年10月14日に、厚生労働省の資料・告示・通知、e-Gov法令検索の介護保険法・同施行規則、各自治体の公式ページで確認したものです。具体的な手続きや様式は市区町村ごとに異なります。
出典
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第3回・2026年3月9日 参考資料)
- 厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(老企第42号・最終改正平成30年7月13日)
- 厚生労働省 告示「居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額」(平成12年厚生省告示第35号)
- 厚生労働省 告示「厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類」(平成11年厚生省告示第95号)
- 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(老企第34号・抄/2026年3月9日 検討会参考資料)
- e-Gov法令検索「介護保険法」(第9条・第45条・第49条の2・第57条・第59条の2)
- e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」(第74条〜第76条・第93条・第94条)
- 文京区「住宅改修受領委任払い(給付券)」
- 大田区「高齢者自立支援住宅改修助成事業(要支援又は要介護に認定された方)」
- みらいエコ住宅2026事業「バリアフリー改修【リフォーム】」
- みらいエコ住宅2026事業「リフォーム」(要件化工事)
- みらいエコ住宅2026事業「よくある質問」(全体)
確認状況
2026/10/14
編集部
制度・数字は改正等で変わります。最新の内容はリンク先の公式ページでご確認ください。


